国内でSaaSベンダーが増加!クラウドサービスの市場規模について徹底解説

SaaS(サース)は、インターネットのサーバ上でアプリケーションを動かすため、利用者の負担が軽く、複数台の端末への導入も手軽なクラウドサービスです。
世界的に規模が大きくなっているSaaS市場ですが、ネットワーク上で稼働するクラウドサービスには、SaaSの他にいくつか種類があります。
今回は、クラウドサービスの種類を整理しつつ、SaaSベンダー(サービスの提供者)やクラウドサービス全体の市場規模について解説します。

SaaSとは?クラウドサービスの階層について

SaaSは「Software as a Service」の略称であることから分かる通り、ユーザーにソフトを通じて、何らかのサービスを提供する仕組みです。
SaaSの具体例としては、「iCloud」のようなファイルストレージサービスがあります。
パソコンに写真を保存しておくと、マシンが壊れた時に大事な写真を失ってしまうリスクがありますし、スマートフォンなどとファイル共有していると、重複ファイルも生まれがちですが、クラウド上で一括管理しておけば、それらの課題が解決します。

そのSaaSの土台となるクラウドサービスの形態に「IaaS」「PaaS」といった仕組みがあります。
まずは種類についてまとめておきましょう。

クラウドのインフラを用意する「IaaS(アイアース)」

IaaSは「Infrastructure as a Service」の略で、文字通り提供者側(プロバイダ)は、クラウドサービスのインフラ(インフラストラクチャー)であるサーバを用意します。

例えば交通インフラであれば、自動車をスムーズに移動させるために用意された道路や交通標識といった構造が必要であるように、クラウドサービスが必要とするインフラは、安定して稼働するサーバや回線です。

IaaSでは、ユーザーに対して物理的なサーバ、あるいは一台のコンピュータをソフトウェアで論理的に区分けした仮想サーバを提供します。ユーザーは、各自でOSをインストールして使うため自由度が高いクラウドサービスです。

サービスを動かす土台としての「PaaS(パース)」

PaaSは「Platform as a Service」の名称通り、アプリケーションを動かす土台(プラットフォーム)をベンダー側が用意するサービスです。
ユーザーは、その土台を利用して各自のアプリケーションを動かします。人工知能による画像認識など、高いマシンスペックが必要とされる開発においては、自分が保有しているコンピュータでは時間がかかる処理をクラウド上で行えるなどの利点があります。

また、webサイトやサービスを提供する場合でも、アクセス数(トラフィック量)が急激に増えた際に、それに応じた対応(スケーリング)が自動化されているため無駄がありません。
このPaaSの分野では、Google(Google Apps Engine)、Microsoft(Azure)といった大手企業が参入しており、新規に参入するSaaSベンダーの中には、これらのプラットフォームを活用してサービスを動かしている例もあります。

市場規模の拡大が予想されるSaaS市場

IT関連の市場調査を行う、富士キメラ総研のレポート(※1)によれば、2022年にはSaaS市場が 6,000億円を超えると予測されています。
2017年から2022年にかけての市場予測では、従来のパッケージソフトの伸び率が約20%程度であるのに対して、SaaS市場はその3倍にあたる 65%との将来予測が出されました。

近年では、MacBookのようにCD/DVDを使うドライブがないモデルも増えています。Apple社では「App Store」で主流のソフトを販売しているため、ユーザーは個々のパッケージを保有せずに、アカウントを管理することで利用権を得ています。

※1 ソフトウェアビジネス新市場 2018年版

国の政策としても後押しされるSaaS市場

パッケージからクラウドサービスに変化しつつあるソフトウェアビジネスの変化に伴い、総務省では「ASP・SaaS・クラウド普及促進協議会」を後押しし、ASP・SaaS市場の拡大を図っています。
同省が公開する「情報通信白書」では、ICT(情報通信技術)企業が牽引するデジタル経済の重要性に着目し、「Society(ソサエティ) 5.0」(※2)を定義しました。

「Society 5.0」では、空間をサイバー(仮想)とフィジカル(現実)に区分けしながらも、両方を組み合わせることで、経済発展と社会的課題の解決を目標としています。

現在多くのSNSユーザーの活動状況を見ていると、すでにサイバーとフィジカルは、分ける必要もないほど密接になっていると思いますが、国として両空間を明確に位置づけたという点では、意義のある取り組みだと言えるでしょう(※3)。

※2 内閣府|科学技術政策「Society 5.0」

※3 北欧のエストニア共和国では、運転・投票・納税などを1枚のIDカードで一元管理していることを考えると、日本ではまだ書面による非効率的な仕事が多いという現状はあります。

国内SaaS業界の動向

パッケージソフトの販売においては、

  • CDなどパッケージの流通コスト
  • 海賊版などコピー対策
  • 端末それぞれでのインストールとアップデート処理

といった課題があり、規模に準じてコストが上乗せされる傾向にありましたが、SaaSにおいては、それらの諸問題が解決されます。

ベンダー側もコスト削減のメリットがあることから、国内のSaaS市場では、従来のサービスをクラウド型に展開する企業と、新規にスタートアップとして始まる例があります。
「さくらインターネット」など、これまでレンタルサーバを提供してきた各企業も、クラウドサービスに注力していますし、SaaSの特徴を活かして、個人でも簡単にアプリケーションが開発できる「Monaca」といったプラットフォームも生まれています。

業界団体「ASPIC」

クラウドサービスに関連する業界団体として、日本では特定非営利活動法人として、「ASPIC(ASP・SaaS・Iot クラウド・コンソーシアム)」が運営されています。
ASPICでは、定期的なクラウド研究会を実施することで、それぞれの業界や企業が進めている取り組みを共有するとともに、有識者に最新のクラウド技術を発表してもらう機会を作っています。

SaaSの拡大に合わせてニッチな市場も形成される

手間のかかるインストール作業を必要とせず、ユーザーの用途に合わせてサービス利用の「期間」「量(ファイル容量など)」が選べるクラウドサービスは、ベンダー側にとっても、サブスクリプション方式での利益確保などのメリットがあります。

つまり、3万円のソフトを購入してもらうのではなく、「月に1,000円の支払いで、いつでも退会できます」といったサブスクリプション方式であれば、ユーザーを囲い込みしやすいといった例です。

このように「ユーザーが導入しやすい環境」と「ベンダーのコストが押さえられる環境」は、将来ニッチな産業が生まれることを予想させます。
スマホゲームにおける「ガチャ」などの課金方法は、従来の常識では考えられないお金の使い方だったわけですし、LINEなどのチャットサービスで利用する「スタンプ」も市場を生み出しました。
SaaSに代表されるクラウドサービスにおいても、「こんなことにお金を使うの?」という意外な仮想商品の売買が隠れているかも知れません。
また、今後は国内向けサービスだけでなく、世界に向けた取り組みもさらに重視されるべき分野でしょう。

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