2019年に新しく始まる「キャッシュレス・消費者還元事業」は、消費者と各種事業者の日常を大きく変える可能性を秘めた期待の制度となっています。

特に中小・小規模事業者や決済事業者の方は、そのメリットを獲得できるよう基本情報や登録方法を確認して制度への参加を検討してみてください。

キャッシュレス・消費者還元事業の基本情報

キャッシュレス・消費者還元事業とは、特定の店舗でキャッシュレスによる買い物を行なった人に対してポイントを還元するお得なサービスの名称です。

2019年10月1日よりスタートするこちらの制度は現金での決済が主流となっている日本国内にキャッシュレス決済の魅力を伝えるきっかけとして期待されています。

対象となっている一般事業者でキャッシュレス決済による買い物をすれば金額に対して以下のポイント還元を受けることが可能です。

・一般事業者での買い物:5%還元
・フランチャイズチェーン店での買い物:2%還元

回数に制限はなく、期間である2020年6月30日までなら何度でもポイントを受け取れるため、キャッシュレス決済を使うことに大きなメリットが生まれます。

キャッシュレス・消費者還元事業をきっかけにして日々の支払いは大きな変化を迎える可能性もあるでしょう。

制度の対象となるキャッシュレス決済の種類

キャッシュレス・消費者還元事業の対象となった店舗でポイント還元を受けるには以下のキャッシュレス決済を買い物時に利用するだけでOKです。

クレジットカード
・デビットカード
・電子マネー
QRコード決済

買い物をする店舗に合わせて上記のキャッシュレス決済を利用すれば、支払った代金に対してのポイントを受け取れます。
事業者側もこれらの決済手段を自店に取り入れることで、キャッシュレス・消費者還元事業の利用を検討しているユーザーにアピールすることが可能です。

キャッシュレス・消費者還元事業の目的とは

キャッシュレス・消費者還元事業は消費税の増税に合わせて開始されるため、家計の負担を緩和することが目的のひとつとなっています。

2%の増税によって消費の買い控えが起きることを防ぐために、ポイント還元による負担減の機会を提供しているのです。
購買意欲の上昇につながれば、事業者にとってもビジネスチャンスが多く生まれます。

キャッシュレス・消費者還元事業の浸透と利用者の増加に関する情報は、今後も要チェックとなるでしょう。

また、キャッシュレス・消費者還元事業はキャッシュレス決済の普及率を高めるという目的のためにも実施されると考えられます。

日本国内のキャッシュレス決済の利用率は18.4%となっていて(2015年時点)、増加傾向にあるものの海外と比較するとまだまだシェアの低さが目立つでしょう。

そんなキャッシュレス決済の普及を促すきっかけのひとつとしてもキャッシュレス・消費者還元事業への期待は高まっています。

キャッシュレス・消費者還元事業のメリットについて

キャッシュレス・消費者還元事業から得られるメリットは、対象となる消費者、中小・小規模事業者、決済事業者ごとにそれぞれ違っています。

どのようなメリットを獲得できるのか、ひとつずつ確認してみましょう。

消費者のメリット

消費者にとってのメリットには、主に以下のようなものが考えられます。

キャッシュレスによるスムーズな買い物が実現できる

現金を数えておつりを受け取るといった従来の作業が簡略化されるためスムーズに買い物を終わらせることができます。

スピードを重視して買い物を終わらせたい人や、小銭の管理を億劫に感じている人にとってはキャッシュレスのメリットが大きくなるでしょう。

サイフがなくても買い物ができる

キャッシュレス決済の機能を備えたスマホなどを所持していれば、サイフがなくても買い物ができます。
ATMを利用して現金を補充する手間が省け、紛失のリスクを低減できることから気軽かつ安全に日々の買い物を行えるでしょう。

多数のサービスと連携することも可能

キャッシュレス決済に利用できる各種の方法はさまざまな外部サービスと連携することも可能です。

例えば家計簿アプリと紐づけたり、銀行の口座から自動で引き出す設定にもできるためさらに買い物がしやすくなるでしょう。

中小・小規模事業者のメリット

商品やサービスを提供する側である中小・小規模事業者には、以下のようなメリットがあります。

端末の導入にかかる費用がなくなる

キャッシュレス・消費者還元事業に参加することで自店で利用するキャッシュレス決済の端末本体と設置費用が無料になります。

今現在キャッシュレス決済の環境を整えていない店舗はこれを機にローコストでの導入を検討できるでしょう。

期間中の決済手数料がお得になる

キャッシュレス決済の利用時に発生する決済手数料がキャッシュレス・消費者還元事業へ参加することで32.5%以下に抑えられます。

期間中はさらに国がその3分の1を補助してくれるため実質2.17%の手数料でキャッシュレス決済を利用できるのです。

集客力のアップに期待

キャッシュレス・消費者還元事業に参加している店舗であるとアピールすることで集客力を高めることも可能となります。

消費者にお得な体験を提供できるため、事業内容を変えずに新しい顧客層を開拓できるでしょう。

業務の効率化につながる

キャッシュレス化を進めることでレジ作業にかかっていた手間や時間を削減することができます。

業務の効率化やコスト見直しにつながるためキャッシュレス決済が職場全体に良い影響を与えることに期待可能です。

決済事業者のメリット

キャッシュレス決済サービスの提供を行う決済事業者も、キャッシュレス・消費者還元事業に参加することで以下のようなメリットを得られます。

キャッシュレスサービスのシェアが広がる

キャッシュレス・消費者還元事業によって初めてキャッシュレス決済を利用するユーザーや、導入する店舗が増えると思われるためそのシェアが大きく広がる可能性があります。

決済事業者による管理やサポートを求める声が大きくなると予想できるためビジネスチャンスにつながるでしょう。

継続した利用者の獲得につながる

キャッシュレス・消費者還元事業を機にキャッシュレス決済事業者と契約した店舗は、制度の期間終了後の2020年6月以降も継続して利用してもらえる可能性があります。

長期的な利用者を獲得する機会になるため制度への積極的な参加が推奨されるでしょう。

キャッシュレス・消費者還元事業の対象となる事業者

キャッシュレス・消費者還元事業の対象となるにはいくつかの条件をクリアする必要があります。

中小・小規模事業者と決済事業者ごとに条件を確認し、自店が制度の対象になるかチェックしておきましょう。

中小・小規模事業者の場合

中小・小規模事業者はその職種によって参加条件が異なるため、以下を参考に資本金額や従業員数を確認するようにしましょう。

業種分類 資本金の額
もしくは出資の総額
従業員の数
製造業その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100円以下
1億円以下 小売業 小売業
5千万円以下 50人以下 サービス業

これらの条件を満たした上で申請を行った事業者が、キャッシュレス・消費者還元事業への参加を認められます。
個人事業主もこれらの条件の元で事業内容を審査され対象となるかどうかが決められます。
一方で以下の事業者や取引内容はキャッシュレス・消費者還元事業の対象外となり、補助を受けることができません。

対象外となる事業者

・地方公共団体、公共法人
・金融商品取引業者
・保険医療機関
・学校
・宗教法
・風俗店
・暴対法上の団体に関係する事業者
・保税売店
・法人格のない任意団体

その他キャッシュレス・消費者還元事業にふさわしくないと経済産業省や補助金事務局が判断した事業者に関しては参加が認められないことがあります。

対象外となる取引内容

・有価証券(商品券やプリペイドカードなど)
・自動車(新車と中古車)の販売
・新築住宅
・宝くじなどの公営ギャンブル
・収納代行サービス
・給与
・寄付金

上記に加えて適切でないと判断された取引も補助の対象外になることがあります。

決済事業者の場合

キャッシュレス・消費者還元事業の対象となる決済事業者は、以下の3種類で定義されています。

キャッシュレス発行事業者(A型決済事業者)

キャッシュレス決済で購入した消費者にポイント還元等を実施する事業者

キャッシュレス加盟店支援事業者(B型決済事業者)

キャッシュレス決済の環境を提供し、キャッシュレス・消費者還元事業への申請を受け付ける事業者

キャッシュレス加盟店管理事業者(準B型決済事業者)

キャッシュレス加盟店支援事業者と連携して加盟店契約の締結をサポートする事業者

上記に加えて加えて、以下の条件を承認する必要があります。

・3.25%以下の手数料率で事業者と契約できる
・キャッシュレス決済に使う端末費用の3分の1を負担できる(残りの3分の2は国が補助)
・不正取引の防止に対して適切な対応が行える

キャッシュレス・消費者還元事業に欠かせない環境の構築に協力できることが、決済事業者の参加条件となるのです。
さらにキャッシュレス・消費者還元事業が「公募するキャッシュレス事業者の要件」として公表している以下の点をすべて満たしている必要もあります。

公募するキャッシュレス事業者の要件

  1. キャッシュレス決済事業者と認可されている(みなし認可でもOK)
  2. 日本国内を対象としたキャッシュレス決済サービスを取り扱っている
  3. 加盟店向けのサービスを提供している(B型決済事業者のみ)
  4. 日本国内の通貨と口座を利用している
  5. セキュリティの担保ができている
  6. 安定した事業基盤が完成している
  7. 円滑に事業を行える体制が整っている
  8. 経済産業省指名停止措置を受けていない
  9. 反社会的勢力との関係を持たない
  10. 法令順守上の問題を抱えていない
  11. 求められる情報公開に同意できる
  12. 本制度の宣誓事項に同意できる

キャッシュレス・消費者還元事業に参加する方法

キャッシュレス・消費者還元事業の対象であることを確認できた事業者は、下記の流れで登録・申請を行うことができます。
中小・小規模事業者と決済事業者でそれぞれ内容は変わるので、基本的な手順をチェックしてこの機会に参加のための準備を進めておくのもおすすめです。

中小・小規模事業者の参加方法

中小・小規模事業者は現在使っているキャッシュレス決済手段を継続利用するかどうかで、手順が多少変わってきます。

現在のキャッシュレス決済手段を継続利用する場合

  1. 加盟店IDの有無を確認する
  2. 持っていない場合契約している決済事業者に連絡して発行を依頼する
  3. キャッシュレス・消費者還元事業に参加することを決済事業者に伝え、加盟店IDや契約情報などの必要項目を登録する
  4. 審査結果を待つ

キャッシュレス決済手段を契約していない、今とは別のプランを選びたい場合

  1. キャッシュレス・消費者還元事業で契約したい決済事業者を選ぶ
  2. 加盟店IDを発行してもらう
  3. キャッシュレス・消費者還元事業に参加することを決済事業者に伝え、加盟店IDや契約情報などの必要項目を登録する
  4. 審査結果を待つ

決済事業者の参加方法

決済事業者の登録方法は、以下のようになります。

  1. キャッシュレス・消費者還元事業の事務局に対して、決済事業者として登録申請を行う
  2. キャッシュレス・消費者還元事業のサイトから応募に必要な書類をダウンロードし、電子メールで送信
  3. 登録完了を待つ

登録以降は事業者からの申し込みを受け付けて、審査や必要書類の確認・アップロード等を行います。

多くの事業者がキャッシュレス・消費者還元事業への登録申請を表明中!

キャッシュレス・消費者還元事業への登録申請を表明している中小・小規模事業者は非常に多く、その注目度の高さを証明しています。
大企業や有名決済サービスも名を連ねているので、キャッシュレス・消費者還元事業へ登録する重要性はさらに高まっているといえるでしょう。

登録申請をしている中小・小規模事業者

2019年7月30日の段階で、登録申請を行っている加盟店は約24万店に登っています。
全国規模で広がっているこの動きは冷めやらず、経済産業省は同年8月2日に登録申請数が28万件に達したと発表しました
さらなる登録申請数の増加も予想されるので、検討している事業者は早めの対応が求められるでしょう。

また同年8月20日には大手コンビニのセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンもキャッシュレス・消費者還元事業の実施を受けて、キャッシュレス決済への2%還元を開始すると発表しました。
制度の対象外となる直営店についても、本部が2%の還元分を負担するため、キャッシュレス決済の本格的な普及に期待できます。

決済事業者も続々と制度への参加を決めていて、事業者が選択できるキャッシュレス決済サービスは増えているのです。
自店の環境や客層に合わせて契約するキャッシュレス決済を選べれば、よりキャッシュレス・消費者還元事業のメリットを実感しやすくなるでしょう。

キャッシュレス・消費者還元事業に参加している決済事業者の一例

PayPay(ペイペイ)
LINE Pay(ラインペイ)
Origami Pay(オリガミペイ)
メルペイ
・AirPAY(エアペイ)
・Square(スクエア)

キャッシュレス・消費者還元事業は決済の当たり前を変える!?

キャッシュレス・消費者還元事業は、消費者にとっても事業者にとっても注目すべき政策です。
これまで現金での支払いが当たり前だった日常が、2019年を境に大きく変わっていくかもしれません。

特に事業者はこの機会をビジネスの拡大に活かして、売上アップや業務の効率化へとつなげていくことがおすすめされます。
考えられるメリットや対象となる事業の条件を確認し、具体的な申請スケジュールを立ててみましょう。

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