米ロサンゼルスに本拠を置く「ウェーブ・フィナンシャル(Wave Financial)」が、BTC(ビットコイン)のデリバティブ(金融派生商品)をベースにしたファンドの立ち上げを発表しました。投資信託販売・運用会社「フィデリティ(Fidelity)」も、このファンドのBTCカストディ業務をバックアップする予定です。
このファンド立ち上げのきっかけは、BTCベースのデリバティブが増加する傾向にあるためで、米国先物取引所「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)」を運営するCMEグループも、2020年の第一四半期には、同社のBTC先物取引で、デリバティブ市場を開設することを明らかにしています。
ファンドの仕組み
仮想通貨業界でもオプション取引(選択売買権取引)戦略が活発になり、ウェーブ社もビットコインベースの金融派生商品ファンドをスタートさせました。デリバティブとは、商品(エネルギー・農産物等)・通貨・株式・債券などの価格変動から利益を得る取引のことです。
2017年以来、BTC市場価格は、インデックス指数や市場心理のデータに活用されています。金融機関はこれらのデータを、通貨スワップ取引・先物取引・オプション取引などに利用しているのです。一般的には、先物市場が成長してからオプション取引が開始され、投資家は市場心理に連動した価格変動をもとに利益を生み出します。
今回、立ち上げられたウェーブ社のファンド「The Wave BTC Income & Growth Digital Fand」は、ファンドで保有しているBTC準備金の購入権利を売り渡すことで投資家に利益をもたらす計画の下に生まれました。準備金となるBTCのカストディ業務は、フィデリティの関連会社である「Fidelity Digital Assets」が行うことになります。
ウェーブ社のベンジャミン・ツァイ(Benjamin Tsai)社長は「多くの資産を持つ投資家にとって、革新的な利回りと価格上昇の可能性を秘めた商品に対する欲求は強い。こうした商品は、金利に縛られた状況から独立して、BTCの高いボラティリティにおいても収益を生み出しながら、リスクの上昇も抑えることができる」と説明しました。
ウェーブ社は、ファンドは月に純資産価値(NAV)の1.5%にあたる配当を見積もっています。ファンドの年間目標利回りは18%を設定しており、配当の余剰資産でBTCを追加購入することで、全体的な純資産価値(NAV)をさらに増大させる計画です。
また、ウェーブ社によると「ファンド収入は、BTCを現在の価格よりも高いストライクプライス(権利行使価格)で投資家に売り渡すことで生み出している。これにより、投資家は利益を生む可能性を持ったBTCを得ることができる」とのことです。
CMEとバイナンス(Binance)もオプション取引市場へ参入
CMEも2020年の初めには、BTC先物でのオプション取引市場に参入することを発表しました。同社によれば、暗号資産(仮想通貨)の人気と、リスク管理への需要から、オプション取引戦略の取り組みを決めたとのことです。マージンを節約できる可能性を投資家に提供し、リスクマネジメントに対する選択肢を広げることにもつながると同社は強調します。
この流れに合わせて、大手仮想通貨取引所「バイナンス(Binance)」も、仮想通貨デリバティブとオプション取引への参入を示唆しています。2019年9月に同社はデリバティブ取引プラットフォームを提供する「JEX」を買収しており、先物・オプション取引・さまざまなトークンベースのデリバティブ商品を扱えるようになっています。また、JEXトークンを使ってデリバティブ市場を強化する意図もあるようです。これに対してウェーブ側でも、ファンド独自のトークンを発行して、「後日決済取引システム」を構築する計画を用意しています。
参考
・Financial Giant Fidelity Backs Bitcoin Derivatives Yield Fund
・Options on Bitcoin Futures Coming Q1 2020
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