仮想通貨発行は米ドルの世界支配を打破する最善策、イラン大統領言明

イランのロウハニ大統領はマレーシア訪問中(2019年12月19日)、イスラム諸国が暗号資産(仮想通貨)を発行することが、米ドルの世界支配を打破する最善の策であると言明しました。

同大統領はまた、米国による経済制裁は、他の国を支配し、抑圧する道具であると断じて、独自の仮想通貨発行はその対抗策の1つであるという見解を示しました。イランは米国の経済制裁が撤廃されない限り、中央銀行による仮想通貨を発行する準備を一段と進めることになりそうです。

米国の金融支配排除のするイスラム仮想通貨の創設呼びかけ

ロウハニ大統領はマレーシアで開かれたイスラム諸国首脳会議で、イスラム世界は米国政府とその金融制度による支配を許さない何らかの対抗策取るべきだと主張しました。イランは1979年以来、米国から経済、軍事、貿易そして科学面の制裁を科せられています。

同大統領は席上、米国の経済的覇権と戦うために、金融協力を深めなくてはならないと呼びかけました。また解決法として、イスラム諸国間の金融協力の具体的な形として、イスラム諸国間の各国通貨による貿易とイスラム法に基づく仮想通貨の創設を提案しました。

同大統領の表現によると、「イスラム世界は、米ドルとその金融制度の占有から逃れる策を練らなくてはならない」としています。同大統領はさらに、イスラム諸国間の金融テクノロジー協力に向けて共同資金の創設を呼びかけています。

マレーシア、トルコなどイスラム主要国がイランの主張に賛同

マレーシアのマハティール首相は、ロウハニ大統領の見解に賛意を示し、米ドルの受け入れは一国の経済発展の妨げになる制裁をもたらすとコメントしました。同首相はさらに続けて、米国の金融システムから解き放たれることの必要性を説き、この首脳会議に出席した国は、共通の通貨をもっと積極的に利用できるのではないかとして、「米ドルを利用するようになってずいぶん経つが、経済発展を抑制する制裁がある。われわれは独自の通貨もしくは共通の通貨を保有することができる」と語っています。

トルコのエルドアン大統領は、イスラム法に準じる形で資金の供給を受けるべきだと考え、共通の通貨の詳細を検討する作業部会を設けることを提案ています。

イランはマイニングを合法化し、ステーブルコイン発行準備進める

ドルの世界支配を脱する動きには先例があります。ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字で代表される新たな成長国家で構成するBRICs諸国は11月、米国のドル支配を脱するための共通の仮想通貨を発行する計画を提案しています。その際にロシア直接投資基金(RJIF)のキリル・ドミトリエフ(Kiril Dmitriev)最高経営責任者(CEO)は、米ドルによる外国貿易決済のシェアは、過去5年にわたり42%も落ち込んでいると報告しています。

イランは19年初め、仮想通貨のマイニング(採掘)を合法化しました。また金(ゴールド)との交換ができる独自のステーブルコイン「PayMon(ペイモン)」を開発済みであるとの報道もありますが、詳細は明らかになっていません。

参考
Iran Proposes Cryptocurrency for Muslim Nations to Reduce Reliance on U.S. Dollar
Iran Leader Urges Deeper Muslim Links to Fight US ‘Hegemony’

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