VCファンドをブロックチェーン上でトークン化するマーケットプレイス「VNX EXCHANGE」

セキュリティ・トークン(Security Token)が話題になって久しいです。すでにOpen FinanceやTzeroが、アメリカで機関投資家向けに市場をオープンしています。セキュリティ・トークンは、未上場企業やスタートアップ企業の株式がトークン化され、流動性を持つという文脈で語られることが多いです。

それ以外にも、トークン化される事例として注目すべき対象はVCファンドのトークン化です。そのプロジェクトの一つに「VNX EXCHANGE」があります。

VCファンドをブロックチェーン上でトークン化するマーケットプレイス「VNX EXCHANGE」出典:https://vnx.io/

ファンドビジネスの基本構造

そもそも一般的にVC(ベンチャーキャピタル)ファンドというビジネスがどのような成り立ちかということから振り返ります。基本的に、VCファンドはファンドマネージャーが他人の資金を預かって運用するビジネスです。運用者をGP(General Partner)、出資者をLP(Limited Partner)とそれぞれ呼びます。

ファンドのビジネス構造は、マネジメントフィー(一般相場2-3%)、成果報酬(一般相場キャピタルゲインから20%)をファンドマネージャーであるGPが受け取り、運用し、LPは彼らに資金を預け、利益を期待します。

成果報酬は、ポートフォリオ全体の利益が2倍になったら、キャピタルゲインの20%から40%に上がる、などという段階的に調整するケースも多々あります。ファンドマネージャーのインセンティブ設計の工夫として、これについては細かく分類をすると色々なパターンが考案されています。

マネジメントフィーは、ファンドの出資金額全体から年間で支払われます。このマネジメントフィーから、ファンドマネージャーの基本給与やオフィス代、出張費用、リサーチ費用など諸々を賄うイメージです。一般的にスタートアップに投資をするファンドであれば、投資先のEXITはIPOか買収ということになります。

米国では、スタートアップがIPOに平均して創業から10年以上と言われており、ファンドの期限もそれに沿ったものになります。

既存のVCモデルの課題

投資参入障壁

VCファンドに投資をすることは、最低投資金額が$500K(約5,500万円)や$1M(約1億1,000万円)になることが一般的で、多くの個人投資家には参入障壁が高い市場で隔離されています。

VCファンドの長い償還期限

VCのファンドは運用期限は多くの場合、10-12年に設定されています。ファンドに投資をするLP投資家は、投資資金をこの間ロックアップされます。

VNX EXCHANGEによるVCファンドのトークン化は何を解決するか

VNX EXCHANGEは、VCファンドをトークン化するプラットフォームです。トークン化した二次流通市場が作ることで、投資参入障壁と長い償還期限という上記の2つの問題を解決しようとするアプローチをとっています。ブロックチェーンを利用した証券のトークン化は、コンプライアンスコストと二次流通のコストを下げるため、これまで存在しなかった市場が生まれます。

VCファンドをブロックチェーン上でトークン化するマーケットプレイス「VNX EXCHANGE」出典:https://medium.com/@vnx/vnx-exchange-unlocking-the-tokenized-future-of-venture-capital-industry-399dd9cf4c94

VNXは、ルクセンブルグを拠点に、現在、CSSF(Commission de Surveillance du Secteur Financier)のライセンスを取得中であり、監督されたVCファンドの二次流通市場を作る動きを見せています。

また、ルクセンブルグ現地では、トークン化したアセットを安全に管理するための研究をルクセンブルグ大学と提携して進めています。(参照

VNX EXCHANGEに限らず、VCファンドのトークン化は、これからセキュリティトークンの中でも一つの大きなトレンドでしょう。

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