
製造者が小売の流通経路を挟まずに直接消費者へ提供する「D2C(Direct to Consumer)」。このビジネスモデルがいま、“酒“業界で注目を集めています。
お酒はこれまで酒屋などの小売店で購入したり飲食店で嗜んだりするのが主流でしたが、コロナ禍で自粛が余儀なくされたためにAmazonなどのECサイトで購入する人が急増。そして、お気に入りのブランドや蔵がある人は、製造元が運営するECサイトから直接購入するケースも増えています。
各ブランドやメーカーも、ECサイトでの販売を通じてユーザーと直接的にコミュニケーションが取れることでニーズが汲み取れたり、キャンペーンやDMの反響などを分析することで売り上げUPを狙えるなど、メリットが多くあります。
また、近年ではSNSを通じて情報発信やPRができることもあり、造り手と買い手の距離が縮まっているのもD2Cが加速する追い風になっているのかもしれません。
今回は、年間の休肝日がGWの休日よりも少ない酒好きライターが、いま気になっているお酒のD2Cサービスを紹介していきます。
KURAND(クランド)
全国の小さな蔵元と協力し、日本酒の魅力やおいしさを発信し続けているKURAND。2020年6月に設立されたD2Cプラットフォームサービスでは、既にさまざまなお酒がリリースされています。
このプラットフォームでは、「お酒を、もっと自由に、面白く。」という理念のもと、アート、音楽、映画、漫画、アニメ、企業、ブランドなどとコラボした新しいお酒を製造・販売しています。
これまでに販売されたお酒
元来のお酒ファン意外にも、エンタメ・コンテンツのファンにも興味を持ってもらい、お酒の魅力を知ってもらうきっかけになりそうです。
SHUGO(シュゴウ)
NCLUSIVEとアクアが共同で事業企画・運営を行う「SAKE PROJECT」の一貫でリリースされたD2C日本酒アプリ「SHUGO」。
厳選された日本酒を購入できるECアプリ「SHUGO」を使うと、注文した商品が蔵元から直接ユーザーに冷温で届く仕組みになっています。
独自のコールドチェーンによって温度管理された、冷蔵状態で日本酒が届くため、フレッシュな味わいが楽しめるのが魅力。
D2Cはユーザーが製造元を目掛けて行動を起こす必要がありますが、何を選ぶか迷っている、お酒の選択肢が欲しい人にとっては嬉しいサービスでしょう。SHUGOで注文したことがきっかけで酒蔵のファンになる可能性も大いに期待できます。
SAKE100(サケハンドレッド)
2018年に開始されたD2Cモデルの日本酒ECサービス「SAKE100」。高品質・高価格の“プレミアム日本酒”を酒蔵とともに開発し、ネット経由で販売しています。
2020年11月時点で、商品のラインナップは百光(びゃっこう)、思凛(しりん)、天彩(あまいろ)、現外(げんがい)の4種類。
それぞれ味わいや特徴が全く異なり、中には精米歩合18%というお酒も。これは、米一粒の外側82%を削り、残った18%の大きさの米だけを使った日本酒ということです。米を削るほど雑味がなくなりますが、その分かなりの時間も手間もかかるためできあがったお酒も高価になります。
SAKE100で販売されているお酒の価格はプレミアムだけあり、最低でも1本15,400円、1番高価なものは165,000円にまでなります。
最高峰を目指して造られたお酒、一生に一度は飲んでみたいですね。
日本酒以外のD2Cサービスにも期待
紹介したサービスはどれも日本酒のものでしたが、海外ではワインのD2Cサービス「Winc(ウィンク)」なども開始されています。
日本でも、米フェイスブック日本法人の前代表・長谷川氏が立ち上げたスタートアップMOON-X株式会社が発表したクラフトビールのブランド「CRAFT X クリスタルIPA」が月額制&D2Cを取り入れたことで注目を集めました。
現在は日本酒をはじめ、クラフトビールやクラフトジン、ウイスキー、ワインなど各メーカーや蔵ではECサイトを立ち上げ、既にそれぞれがD2Cを行っています。
SNSやサイトを活用した情報発信・PRは自社のECサイトへの集客に効果的です。
同時に、KURANDやSAKE100のように新たな酒を造り、今までとは違う新たなユーザーへ酒の魅力を発信できるプラットフォームが、今後さらに増えていくことが期待されます。