2020年内にあるかもしれないRippleのIPOショックというリスクについて

リップル(Ripple)社の最高経営責任者(CEO)であるブラッド・ガーリングハウス(Brad Garlinghouse)氏が「The Wall Street Journal」のインタビューに対して、今後1年以内にIPOの申請をする可能性があることを示唆しました。

Ripple社のIPOの可能性

ガーリングハウス氏はこれから1年の間に暗号通貨・ブロックチェーン企業の多くがIPOするのではないかと予想し、Ripple社はそのうちの1社になる可能性があるとコメントしています。

暗号通貨・ブロックチェーン業界におけるIPOの例としては、中国のカナン(Cannan)社が2019年末に申請を済ませています。また今後、IPOの可能性がある企業としては、コインベース(Coinbase)やクラーケン(Kraken)などが予想されます。いずれの企業もベンチャーキャピタルから出資を受けており創業時期は2011年から2013年に集中します。ベンチャーキャピタルのファンド期間は一般的に10年前後であり、その間にリターンを出す必要があります。つまり、いずれの企業も今後数年以内にはIPOを目指すタイミングであると言えます。

Ripple社については、これまで合計2億9,200万ドル(約320億円)を資金調達して、2019年末に2億ドルを資金調達したシリーズCのラウンドでの評価額は100億ドルであったとされています。これまでの資金調達の推移は下記の図の通りです。

リップルの資本推移
出典:Messari

同社の投資家にはパンテラ・キャピタル(Pantera Capital)やブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)、a16zの他に日本のSBIなどが存在します。

2020年内にあるかもしれないRippleのIPOショック

しかし、RippleのIPOには懸念すべき点があると感じています。Ripple社は基本的には、国際送金の利便性を向上するためのベンチャー企業として知られています。既に多くの銀行と提携し、分散型台帳の適用を始めています。

プロダクトとしては銀行のための国際送金プラットフォームのxCurrent、xRapidと呼ばれる国際送金の中間通貨XRPをブリッジするためのサービス、xViaというxCurrentとxRapidを統合した製品を提供しています。また、これらのベースとなっているXARP Ledgerはオープンソースで公開されています。

加えて、同社と関わりのある暗号通貨として、XRPというものがあります。これを国際送金の中間通貨として使用するコンセプトを同社は描いています。通常、現在の国際送金でも、中間通貨という概念が存在します。例えばベトナムからベトナムドンで送金し、日本で円で受け取る場合は、ベトナムドン→米ドル→日本円という交換がされています。中間に米ドルが入る理由としては、ベトナムドン→日本円より、ベトナムドン/米ドル、日本円/米ドルの流動性のほうが高く送金がスムーズだからです。Rippleの提案する国際送金では、この中間通貨にXRPという独自の暗号通貨を提案しています。

この暗号通貨の存在が問題になる可能性があり、このXRPは、「将来、国際送金の中間通貨になる」という触れ込みで取引所を経由して、投資経験が未熟な個人投資家に向けて販売されています。なお、XRPは特に日本や韓国で人気が高く、取引所もXRPをプロモーションしてきた経緯があります。

Ripple社は、2019年Q2は2億5,000万ドル(約270億円)、2019年Q3は6,600万ドル(約80億円)を市場で売却しました。これらは全てRipple社の売上として計上されているはずです。XRPは現時点で中間通貨としては利用されている実績はないですし、中間通貨になるために生成されたトークンが米ドル以上に中間通貨として適切な理由は何もありません。

しかしながら、その暗号通貨を販売することが同社のビジネスモデルの一部になっていることが問題であると言えます。同社のxCurrent、xRapidといった製品利用の売上がどの程度かは不明ですが、XRPの売上がビジネスモデルの大部分を占めているようであれば、もはや同社の本業は何か分からないと言えるでしょう。IPOに際して、同社の債務状態とビジネスモデルが公になれば、議論される機会も多くなるのではないかと予想されます。

最近では、それまで順調のように見えたWeWorkが上場申請をする際に、その財務状況とビジネスモデルが明るみになり、糾弾された事例もありますが、そのような可能性もないことはないでしょう。

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